“一生懸命やって文句言われたら悲しい”
先日、父の古い友人で会社を経営している方とお酒を飲ませて頂く機会がありました。
会社については個人情報の特定に繋がるので細かいことは書きませんが、何十年も住宅に関わる仕事をしている方です。
酔っ払いながらではありますが(笑)様々なお話をして非常に有意義で楽しい時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました^^
父の友人は皆さん仕事が好きな方ばかりなので、お話すると刺激を受けます。
この日色々とお話をさせて頂く中でひとつ気付いたことがありまして、社長さん(あえて社長さんと書きますね。)の仕事のスタンスと私の仕事のスタンスが本当にそっくりだったんです。
同席していた父も「同じこと言ってるね。」と笑っていました。
どこが似ていたのかというと「仕事を積極的に受けない姿勢」です。
社長さんはお客様が電話でお問い合わせしてきた際や実際にご来店された際の「ファーストインプレッション」と「ファーストアタック」を非常に重んじているそうです。
お客様の印象とお客様の発する言葉で「今後長くお付き合いできるかどうか?」ということを判断し、仕事を受けるかどうか決めているとおっしゃっていました。
住宅という人生の中でももっとも大きな買い物のひとつを商材として扱っているわけなので、そこには私が想像もできないようなご苦労があるのだと思います。
30年以上の長い会社経営の中で培ってきた答えがきっと、今の仕事の受け方なんだと感じました。
そんなお話をしている時に今日のタイトルである「一生懸命やって文句言われたら悲しい」と社長さんがポロリとおっしゃっていたことが、非常に印象的で今日のタイトルにしてみました。
こういう話をすると、中には「お客さんを選ぶなんて生意気だ」とか「大した売り上げもないくせにお客さんを選ぶな」という批判をしてくる人がいるのですが、こういうことって決して“お客さんを選んでいる”わけではないと思うんです。
私の話でいうと、私は基本的に「できれば修理しない」というスタンスでいます。
修理前、お客様に対してどちらかというとデメリットを強く推しています。
どうしてかというと、ご修理した後に「思っていたのと違う」という不満を生まないため、というのが1番の理由ではありますが、もうひとつ、ぶっちゃけると修理した後に何ひとつ文句を言われたくないからです。
ご修理の前に長々とご説明やご案内をしていることに対して「本当にお客さん想いだね」とよく言われるのですが、正直それはお客様を想ってというだけでなく、自衛のためもあるんです。
私は修理に関しては、どんな修理でも「少しでもいい状態でお返しできるように」全身全霊を注いでいます。
それなのに、社長さんではないですけど、一生懸命やってあとから何か言われたら、ただ単純にまず悲しいじゃないですか。
私のミスでお客様に怒られたり、私が悪くて何か言われるのであればそれは当たり前のことなので、真摯に受け止めます。
ただ、どうにもならないことでクレームみたいなことになることも商売というのは往々にしてありますよね。
それを私はできるだけ防ぎたいんです。
ですので、ハッキリ言うと、ご修理前に「もしかすると今後トラブルになるかもな」という予感がしたら、お断りしてAppleの正規店に行っていただくように促しております。
私は別に神様ではないので、出来ることと出来ないことがあります。
うちのメニューを例に出すと、再生パネルをコピーパネルの値段では出せないですし、純正のりんごマークのついたバッテリーを取り扱うことも出来ません。(したくもないです。)
また「非正規店で修理した後にAppleに持って行くとApple Careが使えなくなる可能性がある」ということがありますが、これはAppleとお客様の都合なので私がコントロールできることでもありません。
そういう出来ない・やらないことに対して文句や不満があるのであれば、うちのような民間の修理店に依頼などせず、最初からAppleの正規店に行っていただくのがお互いのためだと思っています。
本音を言えば私だって商売でやっておりますので、少しでも多くの売り上げが欲しいですよ、もちろん。
社長さんだって同じ気持ちだと思います。
ただ、全部終わった後に、なんかどうでもいいような文句を言われたら本当に辛いんですよね。
私はお客様が喜ぶために商売をしているわけです。
細かく言えば理由も色々あるけれど「私が積極的に修理を受けない1番の理由は一生懸命やって文句言われたら悲しいからだな」と、社長さんとお話していてなんだかすごくスッキリというかしっくりきました。
実を言うと、私は開業したての頃は結構積極的に修理を受けていました。
自分があまり慣れていないようなほとんどやったこともない修理も普通に受けていたんですね。
それで壊してしまったことはないのですが、かなり苦労はしました。
初期は修理の広告も積極的に出していましたし、内容はコピーパネル推しという、今思うと結構怖いことを平気でやっていました。
また、今なら絶対にお断りするような方のご修理も積極的に受けてしまっていて、それで修理後に揉めたり喧嘩になったりしたんですよね。
もうそういうことに体力も神経も持っていかれるのが嫌でウンザリしてしまったので、今は消極的なスタンスになりました。
でもこれって、やっぱり職種がすごく関係していると思うんです。
技術職というのは、普通以上にお客様との信頼関係が非常に重要になってきます。
「安心して任せられるな」とお客様に思って頂けないのであれば、やることなすこと全て怪しく思えてしまいます。
特に私たちのような、修理した箇所を目視で確認できないこんな機密度の高い仕事だと尚更です。
ですので、たかがiPhoneの修理、バッテリー交換だと「5,000円くらいの小さな仕事だろ」と思われるかもしれませんが、お客様から信頼してもらえて、かつ私もお客様を信用できなければ、基本的にはどんな修理も受けないことにしています。
今回ご紹介した社長さんの「住宅をつくる」というお仕事は金額も大きい上、専門性も高いです。
また、私なんかよりもさらにお客様と深く長いお付き合いになると思うので、積極的に仕事を受けないスタンスというのは必然のような気もしますよね。
ただ、同じ仕事でも、私はApple製品の買取に関してはかなりアグレッシブに行っております。
うちのお客様は控えめな方が多いので、値段交渉してくる方はほとんどいらっしゃらないですが、買取に関しては値段交渉全然オッケーですし(それで値段を上げるかどうかは別ですが笑)、機会があれば広告も出したいと思っていますし、修理ほどお客様のことを気にしていないと行ったら偏見がありますが、それこそ「来るもの拒まず、去る者ちょっと追う」ような感じです。
買取は、買い取った後にクレームが出るリスクが全くないので、かなり積極的に承っております。
買取は、お断りしたことなど一度もありません。
なんなら、Androidやガラケーまで買い取ってます。笑
誤解して欲しくないのは、私は修理を断ることも多々ありますが、これは決してお客様を選んでいるのではありません。
どんな人にも向く店・向かない店というのがあると思うんです。
向かない方が向かない店に行っても、店側・お客様側双方に不安や不満のある買い物になってしまうので、それを防ぎたいというだけです。
私が修理をお断りするのは、あくまでも大前提としてお客様の為というのがあります。
それは社長さんも同じで、自衛もあると思いますが、積極的に仕事を受けないのは1番はお客様の為だと思います。
なんかいま思ったのですが、私が「社長さん」とか言うと、なんか怪しいですね。笑
今日言いたかったのは、会社も店も経営・運営しているのは人間なので、私たちにも感情があります。
一生懸命やっていればやっているほど、お金をいただくお客様から何か文句を言われると、とても悲しい気持ちになります。
「あんな店行かなきゃよかった」「あんな会社に頼まなきゃよかった」
そんな風に思われたら、泣きたくなるくらい辛いです。
未熟なゆえ言われてしまうのは力不足なので仕方ないですが、言われる必要のないことは私たちも言われたくないです。
提供する方もお金を出す方もお互いに納得できるように、自分に合う会社なり店なりを選んで利用することが消費活動にはもっとも大切ですね。
私もうちを本当に必要としている方にサービスを届けられるようさらに精進していこうと、社長さんと話していて決意を新たにしました。